屋根裏独居

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「同人ゲーム」さよなら、うつつ。 ~金で買える程度のハッピーデッドエンド追加版~ プレイしてみた 感想

 

さよなら、うつつ。

 感想 ※ネタバレ注意

 

「薬物ヒーローADV」と銘打たれた本作。元々は「さよなら、うつつ。」というフリーゲームに、文字通り「金で買える程度のED」を追加した作品。

 

ただし、10分くらいの申し訳程度の分岐ではなく、数時間単位の大ボリュームの内容となっています。内容的にも「さよなら、うつつ。」を包括する trueルートに近いものとなっているので、プレイ済みの方も一見の価値ありです。

 

基本的に同人ゲーム特有のグラフィック荒さだとか、人を選びまくる寄り、電波な要素を過分に含むので、間違っても一般人にオススメ出来ない内容ですが、好きな人は確実に好きなはず。

 

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 タイトル画面。初っ端から何が何だか分からない感じですが、BGMも相まって中々異様な雰囲気があります。タイトル画面も作品の演出の一部だと考えているので、こういった趣向はいいですね。

 

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テキストは基本横書きのレイアウト。システムは吉里吉里なので最小限ですね。

テキストは中々読みやすいです。

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幼馴染ポジションの沙希。グラはこんな感じですが、細かいセリフとかがカワイイです。

モノローグも勢いがあって良いですね。

基本的に、この手のゲームのモノローグは簡単な事も難しい事も、いかに分かりやすく読みやすく、かつスピーディにテンポを良く書けているかが大事だと思っています。

それに加え、先が気になる物語の構成でガンガン読み進めていけます。

 

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CGの枚数が少ないのはフリー・同人ゲーのお約束。それでも要所要所の演出は中々キレてます。

 

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ヒロインにして、薬を介して「向こう側」の世界に行く鍵がこの水夜。ただし、主人公を向こう側に移動させ導くという役割が強すぎて、(そういうタイプのゲームではないとはいえ)ヒロインとして魅力が乏しかったのが残念でした。

 サティのBGMといい、途中で出てくる「救世主」という単語といい、明らかにあの某ゲームを彷彿とさせますがこれは狙ってる気もしますね(主人公の名前も間宮だし)。

 

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主人公を(色々な方向に)導こうとする羊おじさん。

プレイ中は何故か某作品のゴ○の声で脳内再生されてました。

 

異様なグラフィックで見た目はホラーですが、狂言回しとしてだけではなく、何気に物語を機能させる潤滑油になっていた気もします。プレイしてみれば分かりますが、面白いキャラでしたね。

ちなみにエロについては一応はありますが、グラフィックも内容も期待しない方が良いです。

 

さよなら、うつつ。編を読み進めるとクリア後にタイトル画面が変化し、「さよなら、ゆめ。」

 

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タイトル通り、うつつが現実と決別して、夢の世界に行く話ならば、こちらは夢と決別して現実と戦う話です。

 

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ランプをこすって「愛」を望んだ主人公。

実質的な沙希ルートであり、俗に言う「2週目」

うつつ編を補完する内容も含んでいます。断じて蛇足ではなく、優秀な追加ルートだったと思います。

 

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ただし後半、メタフィクションや思考実験の方向に行ってしまったのが、残念といえば残念でした。

個人的な好みはありますが「ゆめ」と決別するなら徹頭徹尾、ハッピーエンドに向かっていって、虚構は虚構の中でしっかりとした完結を見せてほしかった。

メタフィクション自体が駄目という訳ではなくて

要するに、序盤の問答で「愛」と答え、周りの現実に目を向けて過ごす事にした主人公でしたが、

その割に主人公が現実と戦ってる感が少なく、周りに流されて結局ああいう展開になってしまったのがもどかしかったという事です。

うつつ編で存在感を示していた、勝俣がゆめ編では一切出てこなかったのも、作劇的に勿体なかったです。

匂わせていたヤクザ的な繋がりで、カラーギャングのアレコレを解決するのかと思っていましたが…。

もっと突っ込んだ事を言うなら2週目を超えた、3週目で真のハッピーエンドを見せて、そこからのメタフィクションならば、素直に入っていけたような気がします…というかもう虚構でもいいからそういうのも見たかった…。

がそれを含めて「さよなら、ゆめ」という事なのでしょうね。まさにハッピーデッドエンドと言える終わりでした。

「うつつ」の世界はキッチリ落とし前がついて良かったです。

 

総評

 

ある意味で同人ゲームらしい、野心だとか、意欲が伝わってくるのは大変良かった。

荒削りでも商業的な打算抜きでやりたい事や、表現したい事を思いっきりやれる、というのが同人ゲーの良さだと思っているので、そういった意味でも好きになれた作品でした。

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取り敢えず「 さよなら、うつつ。」の部分については無料でプレイ出来るので、気に入ったらこちらの、追加版をプレイしてみるというのも良いかと。自分にとっては少なくとも500円以上の価値は間違いなくありましたし、夢中でプレー出来ました。こういった意欲作は積極的に応援したいですね。

 

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作者の次回作も是非プレイしたい所ですが…。

次回作「音無き世界その代わり」で一旦活動休止のようです。

かなり残念ですが、時間が経っても作者のやりたいように活動を続けていってほしいと思います。